13歳で芸能界デビューし、高校生の時には大手食品メーカーのTVCMに起用されるなど順調にキャリアを歩んでいた相川結さん。芸能事務所に所属していた当時の写真を見ると、黒のロングヘアが印象的ですが、2021年5月にスキンヘッド姿の写真をInstagramに投稿して話題を呼びました。パニック障害と付き合いながら、フリーランスのモデル・俳優として活動を続ける相川さんに、自分が思う「かわいい」を表現できるまでの変化を聞きました。
——Instagramでいろんなヘアスタイルを披露していますが、どんなときにヘアスタイルを変えていますか?
1ヶ月に1回はヘアスタイルを変えています。特別なタイミングがあるわけではなく、より人生を楽しく感じるためです。
13歳で芸能界デビューしてから長い間、黒のロングヘアでいました。「相川結と言えば、黒髪のロングだよね」というイメージをファンの方が持ってくださっていたこともあって、それを崩してはダメだと思い込んでいたんです。そもそも、ヘアスタイルを変えて楽しむ、という発想もなかったのかもしれません。
その後、コロナ禍で仕事が減ったことがひとつの転機になりました。「今だったら、仕事に影響しない」と、思い切って金髪、ショートヘア、そしてスキンヘッドに挑戦したんです。
——ヘアスタイルを変えたことで、気持ちの変化もありましたか?
初めて金髪にしたときに、自分が自分でいられる感覚がしました。黒髪ロングだと“真面目”というイメージを持たれがちでしたが、金髪にしたことで「“真面目な人”としてふるまわなくてもいいんだ」って肩の荷がおりたように楽になって。
——スキンヘッドにしたときの周りの反応はどうでしたか?
褒めてくれる人や好意的な反応があった一方で、中にはSNSやネットニュースなどで批判的な意見もありました。ただ不思議なことに、思ったよりも傷つかなかったんです。
人は、一緒にいる人や、置かれている環境によっていろんな面をもちますよね。その中でひとつでも安心できて自分らしくいられる一面があったら、批判されてもきっと大丈夫。私の場合はパートナーと一緒にいる自分がそうなのですが、家族でも友人でも、また学校や趣味の場などでもいいと思います。
仕事をしているときの自分と、普段の自分は分かれている感覚なので、批判コメントにも「これは“仕事の面での相川結”に向けられているんだ」と、上手に付き合うことができていました。
昔は自己肯定感が低く、周りが求める「かわいさ」に答えることで、自分を肯定していた気がします。でも、いろんなヘアスタイルにチャレンジすることで、自分の中にある壁をひとつずつ壊している感じです。
——ヘアカラーやヘアケアをするときに、大事にしていることを教えてください。
派手なカラーは発色が難しいため、信頼できて、寄り添ってくれるカラーリストさんにお願いしています。
今はベリーショートなので、1週間に1回ぐらいしかシャンプーを使用しません。スタイリング剤をつけていない日は、お湯で流すくらいが自分の頭皮にはちょうどいいことに気づきました。なるべく自然なままでいたいんです。
金髪になった頃から、過度なメイクにも違和感を持ちはじめました。少年っぽさを求めてメイクを控えると肌も綺麗になって。普段はほとんどすっぴんで過ごしています。
もちろん、洋服に合わせてカラフルなメイクを楽しむときもあります。でも「女性だからメイクをしなければいけない」と思ってするメイクは、しんどいなって感じるんです。メイクは自分のために楽しむものであってほしい。TPOも大事だけれど、環境よりも自分の心に合わせて装いもメイクも選べたらいいですよね。
——ヘアスタイル以外に変化はありますか。
昔からファッションが大好きだったのですが、周りからダサいとよく言われていて……。人の目を気にして、自分が好きなファッションやヘアスタイルに挑戦することを諦めていました。
でも一度、パニック障害を発症し、部屋から出られない日々を過ごす中で自分が思う「かわいい」への向き合い方も変化していきました。朝起きて着替えることすらできなかったところから、少しずつ自分の好きな服に関心が持てるようになって。今のパートナーが一緒に服を見に行ってくれたこともありました。
今では、どんなにダサいって言われても、自分がかわいいと思える1軍のものしか身に着けません。仮に非難されても、「でも私はこれが一番かわいいと思っているんだからいいでしょ」って、心の中で言い返すんです(笑)。全部1軍だから、気持ちも無敵。
——自分の「かわいい」を見つけるためにできることはなんでしょうか。
すっぴんで過ごしてみるのがおすすめ。私は自分の目がすごく好きで、大切なときは、あえて目にはメイクをしないんです。コンプレックスがあっても、好きな部分をまずは見つける。好きな部分にはあえてメイクをしないことで、良さが際立つと感じます。
また、すっぴんで過ごす時間で、自分自身の変化にも敏感になれると思います。メイクを毎日していた頃は、肌が荒れても原因がなにか分からなかったんです。でも今は、肌に触れるものが少ない分、自分に何が合わないのかも分かるようになりました。
——相川さんは普段のカジュアルな服装以外にもコスプレなどにも挑戦し、さまざまなかわいさを表現されていますよね。
キャラクターや役を演じる際には、「かわいく見られたい」より、「その人になりきりたい」気持ちが強いですね。スキンヘッドにしたときの一休さんの写真もそうでした。だからこそ気づける自分の良さもあるんです。
例えば「右側の顔の方が盛れるから、写真は絶対に右側から撮る」という人もいるかもしれません。でも、役になりきると、そんなことは気にならなくなって。その結果、自分の新しい魅力を発見できることもあるんです。
——新しい自分のかわいさをどんどん発見されている相川さんは、マトメージュの2022年のブランドメッセージ「かわいいを、解放せよ。」に、どのような印象を受けましたか?
胸にすっと言葉が入ってくるような感じがしました。普段から、「女性らしさ」「男性らしさ」とか、イメージを押し付けられるのが嫌でした。男性だってメイクを楽しんでいいし、女性だって心地よくすっぴんでいていいし……みんなが、性別や役割にとらわれずに、自由に楽に過ごせる世の中になってほしいと願っています。
思い返せば、学生の頃から「こうあるべき」という抑圧があったんじゃないかなと。たとえば、女の子の制服は絶対にスカートだったり、できる髪型が制限されていたり……。長年、抑圧された自分らしさが解放されて、「こうあるべき」というのが全部なくなったらいいですね。
——相川さんはマトメージュを使ったことは?
ずっとバレエをやってたので、まとめ髪スティックでオールバックにしていました。髪がパリパリに固まらないので、演目ごとに髪型を変えるときにも重宝してましたね。途中で崩れても、ぱっとお直しができるので助かります。
——最後に、読者のみなさんに一言お願いします。
自分で自分を好きになる努力を一緒にしていきましょう!どういうときが楽しい、嬉しい、幸せって感じるのかを見つけてほしいです。そういう瞬間を増やしていければ、自分のことを好きになれる時間も増えていくと思います。自分の感情を客観的に捉えるのは難しいことですが、私も読者のみなさんと一緒に自分なりの「かわいい」や「好き」をこれからも見つけていきたいです。