カリスマモデルとして数多くの雑誌に登場していた益若つばささん。読者モデルとしてスタートした活動は、タレントや女優、さらにはコスメやアパレルのプロデューサーにまで広がっています。ギャル時代から20年の活動を通して、益若さんが思う「かわいい」はどんな風に変化してきたのか。そして、プロデュースのプロである益若さんはどんな風に自分らしい「かわいい」を見つけ、発信しているのかお聞きしました。
ー高校生の頃からモデルとして活躍されていましたが、どんなきっかけでモデルを始めましたか?
もともと雑誌が大好きで、小学生の頃からジャンル問わず雑誌を買っては読み漁りました。そんな中で読者モデルという存在を知って、「こんな世界があるんだ」と憧れてよく真似したりしていました。その後、高校生になったある日、渋谷を歩いていたら声をかけられてスナップを撮ってもらいました。同じ頃に色んな雑誌でスナップを載せていただいて、私としては思い出作りくらいの気持ちだったのですが、結果としてそれがモデルのお仕事のきっかけになりました。
ー益若さんといえば「カリスマギャルモデル」という印象があります。モデルを始められた頃には、もともとギャルファッションがお好きだったのですか?
もともとはいわゆる“ギャル”という感じではなかったですね。ギャル系のテイストもかわいいと思っていましたが、原宿系の古着もかわいいなと思っていました。なので、メイクはちょっとギャルっぽい感じで、洋服は古着を組み合わせることが多かったですね。お金のなかった私にとって、古着を使えば数千円で無限大にコーディネートができるのですごく助かって、大好きでした。ただ、しっかりめのメイクと古着の組み合わせが、当時は異色なコーディネートだったので、「変」「かわいくない」ってよく言われていました。
当時は「ギャル=黒くないとダメ」とか「ギャル=こういうファッション」みたいな住み分けが強かったんですよね。そんな中で、私のスタイルはナチュラル系の雑誌に載せるにはごちゃごちゃしすぎだと言われて、ギャル系の雑誌でも古着は違うと言われる。どこにいっても中途半端な感じで、誰にも刺さらないんだなって思っていました。
ーそんな状況から自分の本当にやりたいスタイルを、お仕事でも実現させられるまでにはどんなことがあったのでしょうか?
雑誌に出始めて1〜2年くらいは、オレンジのチークにベージュのリップでみんなが求める“ギャル”をやっていました。そうしているうちに、『Popteen』で全モデルが各2ページずつ自己プロデュースで好きに撮影できる企画に参加させてもらえる機会が回ってきて。そこで初めて、自分が当時本当にやってみたかったスタイルで行きました。ピンクのチークにピンクのリップ、19ミリのコテで巻いた髪の毛にリボンをつけて、お人形のような雰囲気で撮ってもらいました。そうしたら、読者投稿で私の写真とコーディネートが1位になったんです。そこから編集部の方も「つばさに自己プロデュースさせたい」と思ってくれたのか、自分の本当にかわいいと思っているものを言いやすくなりました。ファンの皆さんが、私が好きなものを好きと言えるように背中を押してくれたんだなと思いますね。
ー妊娠・出産もご経験されていますが、当時一度は仕事を辞めようと思ったと伺いました。それでも続けることにしたのはなぜなのでしょうか?
当時、結婚・妊娠・出産ってモデルの世界では「現役終わり」だったんですね。当然私もモデルを辞めるんだろうと思ってファンの子達からの需要がなくなる前に自ら志願してpopteenを卒業しました。でも、当時周りの方がつばさはプロデュース業に向いてるんじゃないか、プロデュース業だったらお家でも仕事ができるよ、と言ってくれて。それだったら自分でもできるかもと思ったプロデュース業が長く続いて、今でも活動を続けられています。
ー出産や妊娠を経て「かわいい」の価値観が変わることはありましたか?
すごく変わりました!私は身長が低いので、もともとは渋谷に行くときは絶対にヒールと決めていました。舐められたくない一心で、どれだけ血豆ができても絆創膏を貼って10センチのヒールを履いていました(笑)。でも、息子を妊娠した時に危ないのでフラットシューズとかスニーカーを履くように変えたんです。はじめて履いてみたら、フラットシューズってこんなに楽でかわいいんだと気づきました。今まで苦手だなと思っていたものでも、環境の変化に合わせて取り入れてみたら、意外とかわいいなと思うことってたくさんあって。どんどん「好き」が広がっちゃうので困っちゃうこともありましたね。
ー一方で「ママ」になったことで、世間的な見方が変わって困ることなどはありませんでしたか?
私も最初は、俗に言う「ママ像」に自分からハマりにいきましたね。怒られたくないから髪の毛の色を暗くしたり、ネイルを取ったり。「なんで親なのに金髪なんだ」とかって叩かれたくないし、いいママでいたかった。でも、一生ネイルしちゃダメなのかな、一生髪の毛黒くしとかないといけないのかな、メイクは薄くしなくちゃいけないのかなって疑問がたくさん出てきたんですよね。いいママって誰にとってのいいママなんだろうとも考えました。手作りで離乳食を作って、仕事をしながら自分なりに育児も励んでいる。なのに見た目でどんな人か簡単に判断されてしまう。それを仕方がないことだと思っている自分に気づいて、そんな考え方はやめようと思いました。
これって「ママ」だけじゃなくて、「いい歳して落ち着いていない」とか「〇〇なのに見た目が派手」とかそういう偏見と同じことですよね。私が骨折した時、アメリカのUCLAの病院に運ばれたのですが、出てきたお医者さんたちがピアスを沢山つけててネームプレートをデコっていてびっくりしたんですよね。世界トップクラスの病院だし、技術はもちろん素晴らしいですよ。見た目で判断せずに、その人が持っている力を見る場所もあるんだなって嬉しく思いました。
せっかく表に出させてもらう仕事をしているので、私も誰かの背中を押す仕事がしたいなって思っています。だから、私を見た同世代やママたちが「益若があんな格好しているなら、私もまだありなんじゃない?」って思ってくれたら嬉しいなと考えて、周りの声を気にしすぎずに好きな格好をするようにしました。
ー20年活動を続ける中で、変わった部分もあれば、変わらない部分もあるんですね。日本では特に著名人の方に対して「一貫性」を求める風潮もある気がしているのですが、それについてはどう思いますか?
若い頃は私も、変わっていく自分のことを「嘘つき」だと思っていました。例えば、昨日まで赤色を好きと言っていたけど朝起きると白が好きになっていたり、苦手だったものが急に苦手じゃなくなったり。でもそれは嘘つきなのではなくて、自分の心が変化して成長したんだってだんだん思えるようになりました。そこからはいろんな変化を吸収するように割り切れました。
人間は少なからず人や環境から影響を受けて生きていて、変化しない方が難しいと思っています。それを人は「変わった」とか「昔はこうだったのに」と言うかもしれませんが…。子どもたちを見ていてもたった1年でもものすごい変化があるし、大人だって10年、20年したら変わるのは当たり前です。だから大人も必要なものから影響されて、何歳になってもチャレンジしてみたり心境が変わったりしても全然いいんじゃないかなと思います。
ー益若さんはさまざまな商品プロデュースもされていますが、どんなことを意識して商品作りをされていますか。
みんなが欲しそうとか売れそうよりも、まず自分が「かわいい」「好き」「使ってみたい」と思えるかどうかを大事にしています。これはプロデュース業を始めた当初から今でも変わっていません。自分の中にあるかわいいのアンテナを大切にして、たまたまそれがファンの方やそうじゃない方にまで広がっているので、奇跡ですね。ただ、私は自分の中でブームが来るのも次への興味も早いので、なかなか世間的にちょうどいいシーズンにいいものを出せない場合もあります(笑)。とはいえ、トレンドよりも、マイブームに向き合って1番熱量の高い時に、自分が思う「かわいい」を伝えるのが大事だなと思っています。
ーまずは、自分がどんなものをかわいいと思うのかから考えてみるのが大事そうですね。
そうですね。最近、友達や知人と喋っていても「〇〇が好き」ってあまり言わない人が多い印象なんですよね。あまり好きなものがはっきりしていない方も多いのかもしれないですね。
私は、携帯カバーだろうが水筒だろうが、自分で買った全てのものに対してなぜ買ったか理由が言えるんですよ。それぐらい自分のかわいいと思うものやテンションが上がるものを大切にして生活をしています。なのでまずは、ものを買ったり何か選択するときは全て理由を説明できるかを考えてみてほしいなと思います。
ーマトメージュのブランドメッセージは「かわいいを解放せよ」。最後に、まだ自分のかわいいを解放できていないという方に向けて、何かメッセージがあればお願いします。
年齢とか、立場とかを気にして自分で自分を縛ってかわいいを諦めちゃっている人も多いのかなと思います。でも、かわいいものを身につけたり持っているだけでもテンションが上がりますよね。それに、気分が上がることでパフォーマンスが上がるかもしれない。自分を幸せにできるのは他人からではなく自分です。だから、自分の「好き」に従ってほしいなって思います。
ギャルだって、「派手だ」とか「常識なさそうだ」とか言われていたのに、今や芯があってかっこいい存在。それは、自分の「好き」を信じて、見た目のジャッジに流されずに一生懸命真面目にやってきたギャルの子たちが作り上げてきた文化だと思うんですよね。だからギャルじゃなくても、ママでも会社員でも同じようにそれぞれの「かわいい」を実現したまま生きやすい文化を作れたらなと思います。私も一緒にそんな文化を作っていきたいです。