モデルやコラムニストとして雑誌やTV、CMなど幅広い舞台で活躍してきた村田倫子さん。最近は、アパレルやアクセサリーブランドのプロデューサーを中心に活動しています。
着実にやりたいことを叶えているように見える村田さんですが、日々トライアンドエラーの連続だと言います。村田さんが夢を見つけ、叶えるまでのストーリーを教えていただきました。
―村田さんは、大学生の時にサロンモデルをしたことがきっかけで芸能の道に進んだそうですね。もともと、芸能の仕事に興味があったのでしょうか?
いえ、授業で指名されるだけでもかなり緊張してしまうくらい人前に出ることは苦手で、なるべく目立たずに過ごしたいなと思っていました。なので、今こんなお仕事をしているのが自分でも驚きです。
サロンモデルを始めたのは、大学生になる前の春休みに原宿に遊びに行った時、美容師さんに声をかけていただいたことがきっかけです。高校生までずっとすっぴんだったくらい美容には疎かったのですが、「雑誌に出ているサロンでヘアメンテナンスができるなんて嬉しい!」という好奇心が勝って、モデルをやってみることにしました。その後、だんだんと撮影依頼をいただくことが増えていきました。
―人前に出るのが苦手だったのに、モデルの仕事を続けられたのはなぜですか?
昔は、目立つとネガティブな視線を向けられることが多く、それが苦手で避けていたんです。なので最初はモデルをしていることを隠していたんですけど、気づいてくれる友達もいて。身近な人達から「応援してるよ」「いつも見てるよ」とポジティブな反応を多くもらって、すごく嬉しかったんです。
それに、サロンでメイクをしていただいて、変わっていく自分を見るのもすごく楽しくて。初めて自分に自信を持てて、これは続けていけるかもと思いました。
―周りからの反応と、ご自身の変化、両方が自信につながったんですね。
そうですね、本当に運とタイミングが良かったなと思います。同時に、お仕事の度に「悔しいな。ここはダメだったな。次はこうしよう」と思うこともあって。その悔しさがあったからこそ続けられたのかもしれません。
サロンモデルの仕事を続けるなかで、読者モデルとしてファッション雑誌の仕事をすることも増えました。当時私が出ていた雑誌は、モデルの性格や考え、趣味など内面にフォーカスしてくれることが多かったんですよ。ファンの方も「倫子ちゃんの考え方が好きです」とか「共感します」といったコメントをくださることが多くて。見た目だけではなく、自身の人間性に共感してもらえるのがまた嬉しくて、さらに続けてみたいなと思うようになりました。
ーモデルのお仕事を始めた当時は大学生だったとのことですが、就職ではなく芸能の道に進もうと思った決め手は何ですか?
正直、大学に入った時は将来やりたい事が見つからなくて…。とにかく勉強を頑張って、身の丈に合った就職先が見つかったらいいなくらいにしか考えていませんでした。
でも、モデルの仕事を続けていくうちに、アパレルブランドとコラボする機会をいただいて。何かを作って、撮影して、お客様に届けて…という一連の過程を経験してみて「あ、これだ!」と何かを掴んだ感覚がありました。
それまで何を目標に人生を歩んでいいのかわからず空っぽだった自分に、やっと目標が見つかった気がしました。この経験が自信に繋がり、またプロダクト作りに関わりたいという目標を叶えるため、芸能の道に進むことにしました。
―今は、ご自身のブランドを立ち上げて、夢を叶えられたんですね。
そうなんです!いつかは自分のブランドを持ちたいという気持ちが強く芽生えてきて、2020年の春に「idem(イデム)」というファッションブランドを立ち上げました。芸能活動を通して色々なブランドとコラボをさせていただいたのですが、その中で出会った方が声をかけてくださったのがきっかけです。今がタイミングだと、割と直感的にブランドを始めることにしました。
そして最近、2つ目のブランド「ANU(アヌ)」を立ち上げました。こちらはアクセサリーと香りのブランドです。もともとフレグランスの開発に興味があったので、その夢を叶えたくて立ち上げました。
―2つのブランドで、クリエイティブの雰囲気は結構違いますよね。
自分のなかでも、「idem」と「ANU」はフォルダーを分けている感覚があります。
「idem」は「日々の恋人」をテーマに、お客さんに寄り添って、「idem」の服をきっかけにおしゃれを好きになってくれたらいいなと考えて作っています。一方で「ANU」のテーマは「纏う想像力」。私のSNSでもあまり発信していないような自分の中で練り上げた深い思考や内面を表現したいなと思っています。太陽と月くらい、表現の仕方が違うイメージです。
―ブランドのお仕事とモデルのお仕事で、向き合い方に違いはありますか?
全然違いますね。ブランドの仕事の方が、自分の内面を素直に反映できたり、過程を楽しめる気がしています。もともと表に出るのが苦手という意識はあったのですが、やっぱり裏方の方が向いているんだろうなとは思います。
それから、芸能の仕事だと割と自己完結できることが多いのですが、ブランドは組織の仕事だなと感じています。今まで組織で働く経験がゼロだったので、最初はものすごく苦戦していました。
せっかちなので滞っているタスクがあると勝手に人の仕事まで進めて、勝手に辛くなって、でも誰にも助けて!と言えなくて…。空回りをしてしまい、チームがぎこちない空気になってしまったように感じた時期もありました。そういったやり方だと、自分もしんどいし、一緒に仕事をする人の成長の機会も奪ってしまいますよね。
たぶん、その当時は互いの信頼関係がきちんとできていなかったから、全部自分でやろうとしたり、助けを求められなかったりしたのかなと思います。今はチームの方々と信頼関係を築くことができ、私自身もチームの仕事を多角的に見られるようになりました。ブランドの仕事ではチームプレイが本当に大切です。
―どうやってチームで信頼関係を築いたのですか?
心の中で思っていることを全て吐き出して、しっかり話し合う時間を作りました。話してみたら、みんなの思い込みが重なり合ってもつれているだけだったりして、私がモヤモヤしていたことはみんなも思っていることでした。結果、風通しが良くなり、チームの団結力もより上がった気がします。
話し合いができたことで、みんなが幸せじゃないと良いものができないんだなと思ったし、チームって生き物みたいにどんどん育っていくんだなと気づけました。ブランドの仕事のおもしろさだなとも感じます。
―昨年は事務を退所し、独立されましたが、それによる仕事への向き合い方の変化もありましたか?
事務所に所属していた時よりも、クライアントさんと直接やりとりをする機会が増えたので、そのことによる変化は大きいです。クライアントさんがどういう思いでプロダクトを作っているのか、何を考えて私に依頼してくださったのか、直接お聞きできるので、より仕事にやりがいが生まれました。仕事をただやるだけでおしまいではなくて、クライアントさんから嬉しいメールをいただいたりするとモチベーションが上がりますね。
―どんどん新しいことに挑戦されていますが、その原動力は何ですか?
やりたいことに素直になったり、好きなものは好きと公言してきたことです。それが私の活動の軸になっていると思います。自分に正直になると、何か迷った時にも戻って来られるし、気持ちよく挑戦を続けられると思います。
それに、トライアンドエラーで自分が大きく成長してきた感覚があるので、変化には恐れずに挑戦したいんです。もちろん失敗はすごく怖いしできれば経験したくないですが、変化を恐れて何もしないとその場に留まるだけで何も起きないので、もったいないです。もし失敗してもいい経験になると考えて挑戦するようにしています。
―まさに、「わたしは、変わることを恐れない。」という今年のマトメージュのキャッチコピーに重なりますね。
そうなんです。すごくいいキャッチコピーだなと思いました。特に若い人ほど、無邪気に失敗できるのでチャンスですよ。年齢は関係ないと言いたいところですが、やっぱり年齢を重ねると守るものが多くなって臆病になっちゃうところもあります。だから、若い世代の人ほどたくさんトライするのが良いと思います。私も大学生の時にサロンモデルをやってみただけでこんなに人生が変わったから。
ー今後は、どんな変化に挑戦したいですか?
まずは、今やっているブランドをもっといろんな人に知ってもらいたいです。私たちのブランドは商品や見せ方のブラッシュアップを繰り返しています。これからもそういった変化を増やしていきたいなと思っています。
そして、今やっているブランド以外にも、機会があれば色々な関わり方で商品作りやプロデュースに挑戦してみたいです。