「可愛すぎる男の娘」としてアイドルデビューし、注目を集めてきたぷうたんさん。2023年の初めに性別適合手術を受け、戸籍上も女性となったことを自身のSNSで公表されました。
幼少期から「女の子になりたい」という思いを胸に抱え、メイクやファッションの研究、そして手術まで数々の変化を経て、なりたい自分に近づいてきたと言います。しかし、かつては、本当になりたい姿を口にするのを恐れていたことも。そんなぷうたんさんを変えたものとは? そして、様々な変化の中でも変わらないぷうたんさんの軸の強さとは? お話を伺いました。
ー幼少期から「女の子になりたい」と思っていたと伺いました。メイクをし始めたのはいつくらいからなのでしょうか。
1番最初のきっかけは、中学校2年生の頃にしたハロウィンメイクです。初めてメイクをしてみて、こんなに顔が変わるんだと興味を持ちました。でも、当時はあくまでも「ジェンダーレス男子」を名乗っていたんです。
女の子になりたいという気持ちは幼稚園の頃からあったのですが、そんなの無理だと思っていたし、恥ずかしいことだと思い込んでいたんです。だから、自分の気持ちを隠して、ちょうどその時流行っていた「ジェンダーレス男子」だと言っていました。
ーその後、メイクやファッションも含めていわゆる「女の子らしい」スタイルをし始めたのはどんなきっかけがあったのでしょう?
高校時代に上京したのが大きなきっかけです。中学時代は「ジェンダーレス男子」と言いながらも、内心ではいろんな葛藤があって、部屋から出られないような日もありました。そこで、私は出身が静岡県なのですが、高校から1人で上京させてもらうことにしたんです。当時は親には言っていなかったのですが、自分の中で「女の子になるぞ」と決意して、髪の毛を伸ばし始めました。
ーその当時からマトメージュもよく使ってくださっていると伺いました。
そうなんです!髪の毛を伸ばし始めてから、ヘアアレンジが大好きになったので、よく使っています。髪の毛を縛る前につけるとすごくよくまとまるんですよ。今ではライブの時にも使っていて、大好きです。
ー高校時代には、周りのご友人やご家族にも「女の子になりたい」とカミングアウトされていたのでしょうか。
自分ではあまり覚えていないのですが、高校2年生くらいの時に、泣きながら友達に電話したことがあるみたいなんです。たぶん気持ちがいっぱいいっぱいになってしまっていたんだろうと思うのですが、誰かにカミングアウトしたのはその時が初めてです。
その後も色々な友達が「いいじゃん」とか「女の子の制服着ちゃいなよ」と言ってくれて。初めて「女の子になりたい」と言うのが悪いことじゃなかったんだと気づいて、自分を認められるようになりました。
それで、親にもカミングアウトすることができました。母も父も、「あなたの人生だから」と言ってくれて、やっと自分らしく生きられるような気がしました。
とはいえ、見た目もやっていることも中途半端だったので、1番つらい時期でもありました。
ー「中途半端」というのは具体的にどういうことでしょう?
見た目もまだまだ男の子っぽくて自分の理想ではなかったし、道を歩いていて「オカマ」と言われたり、トイレで泣いたりすることもありました。でも、その当時は中途半端な自分が悪いんだと思っていたんですよね。
それで、ものすごく努力しようと思って、毎月下地から化粧品を変えたり、メイク動画を深夜まで見漁ったり、かわいい友達や好きなアイドルと自分を比べて何が足りないのか研究したりしました。人は内面が大事だとは思うけれど、私自身についてはかわいい服やメイクで見た目を変えることが自分を強くすることに繋がりました。
ー変わるためのものすごい努力をされたんですね…。「変わりたい」と思っても、努力が続かないという人もいるのではと思いますが、なぜぷうたんさんはそんな風に頑張り続けられるのですか。
たぶん「こうなりたい」っていう気持ちが人一倍強かったんだと思います。だから諦めないし、もし選択肢がいっぱいあるなら幸せなことだと思って一つ一つ試していきます。すぐに諦めたり落ち込むより、早く次に行かなきゃって必死な気持ちでした。
それに、葛藤していた高校3年間で、自分を変えるには自分自身をまず愛してあげなきゃって気付けたんです。愛せるからこそ自分のために努力できるし、努力していると、ファンの方や周りの方からの愛を感じられる場面が増えてきたんです。そうすると、またさらに自分のことが好きになる。そんな循環ができたから、頑張り続けられたのかなと思います。
ー10代での単身上京や、アイドルデビュー、性別適合手術など、とにかく色々なチャレンジをされてきていますが、ご自身の中で、これまでで1番大きな変化は何ですか?
やっぱりタイで性別適合手術したことかなと思います。その前にも色々な変化があったけれど、それは自分が戸籍上男性の中であったことなので、なんとなくモヤモヤしていました。今は、戸籍が女性に変わって、モヤモヤが消えて気持ちが穏やかになったと思います。まだ手術から2ヶ月(取材は2023年4月)しか経っていないので、これからもっと実感していくんだろうなと思います。
ー確かに手術は大きな変化ですよね。手術前には不安などはありませんでしたか?
手術自体は、不安というより楽しみでした。どちらかというと手術は始まりにすぎなくて、その後の痛みやケアが少し心配でした。
あと、周りに公表するのかどうかも不安はありましたね。手術しても自分の中身は大きく変わらないけれど、気持ちが安定していない時にもしネガティブなコメントが来たら沈んじゃうだろうなって。でも、応援してくださる方や、自分と同じような境遇の方の支えになれたらと思って公表しました。結果としては、温かいコメントばかりで安心しました。
ーそういった大きな変化を迎える時、ぷうたんさんはどんな風に気持ちを整えていきますか?
性格的に、もともと不安なこともポジティブに変換する方かなとは思います。不安が大きい時はポジティブなイメトレをしたり、ポジティブな言葉に変換したりします。
でも、別に冒険するのがすごく得意なタイプではないんですよ。どちらかといえば、現実的な選択をしたい方ですし、気持ちの上がり下がりも激しいので落ち込む時もあります。だからこそ、不安が大きい時は、やることをリスト化して書き出すようにしています。
不安なことって目に見えないことが多いじゃないですか。そんなわからないことに対して不安感を覚えるのは勿体無いから、一度、今できることとかやるべきことを書き出すんです。そうすると自然と目の前のものをこなしていけば良いようにできるし、こなしているうちに落ち着いてくるんですよね。これはタイにいる中でさらに意識するようになりました。
ーそんなぷうたんさんは、自分が変わっていくことをどんな風に捉えていますか。
変わっていくことはポジティブなことだと思っています。性転換も、メイクも、今まで自分が過去にしてきたことは全て良くなるためにやっていることです。人が変わりたいと思う時って、より良くなるために変わりたい時で、ダメになるために変わる人ってあんまりいないじゃないですか。だから、変わりたいという気持ちは素敵だと思います。
ー今後は、どんな変化に挑戦していきたいですか。
これからは心が広い女性になりたいなと思っています。勝手に人に期待したり、嫉妬したりするんじゃなくて、相手を信じたり受け入れたりできるような。
親からも「見た目を磨くのはもちろん大事だけど、中身をちゃんと大切にしなきゃだめだよ。内面から出る笑顔が素敵なんだから」とよく言われて育ってきました。本当にそうだなと思うので、内面を磨いていこうと、頑張っているところです。
ー最後に、変わりたいと思っているけれどなかなか一歩が踏み出せないという人に向けて、メッセージをお願いします。
私もそう思い込んでいたけれど、自分が今いる世界が全てだと思わないでほしいです。一歩外に出たら、自分がいた場所がどれだけ小さな社会、小さな世界だったかがわかります。たとえ今いる場所で苦しい思いをしていても、外に出たら自分に合う場所があるかもしれません。
だから、まずは自分の殻を破って、何か一つ行動してみてください。まだ行動していないのに悲観的になってしまうのは勿体無いです。自分が一歩踏み出したら、意外と周りも変わっていきます!