YouTubeやTikTokなど、さまざまなSNSを活用しながら活躍する美容クリエイターのGYUTAE(ギュテ)さん。独学でメイクを学び、現在はメイクアップアーティストとしてだけでなく、SNSを通じて美容に関する知識やTipsなどを発信しています。高校生で全身脱毛症を発症し、自身の病気について告白した動画がSNSで話題に。コンプレックスを抱えながらも前向きに生きるギュテさんの、ポジティブマインドの裏側を伺いました。
——美容クリエイターとして活躍されていますが、メイクを始めたきっかけを教えてください。
14歳の頃、東方神起のジュンスに憧れてメイクを始めました。当時のジュンスはメンバーの中でもダンスやパフォーマンスに秀でているタイプだったのですが、ソロデビューをきっかけにイメージをガラッと変えて。髪色やメイクでまるで別人になったジュンスを見て、メイクをするだけでこんなにも変わるんだと衝撃を受けました。
それで、メイクをすれば自分に対して抱いていたネガティブな感情を変えられるんじゃないかと思って、自分でもやってみたんです。まったく違う自分になれる感覚がすごく楽しくて、どんどんメイクにハマっていきました。
——メイクをするようになって、ご自身の心境や価値観に変化はありましたか?
マインドの面で明るくなりましたね。はじめは周りの誰に見せるでもなく、メイクをした写真をSNSにアップして楽しむだけでした。全然知らない人から「かっこいいですね」とコメントをもらったり、“いいね”が増えていくようになったりして、だんだんと自分の外見に自信が持てるようになっていったんです。それで次第に自己肯定感も上がっていきました。
——当時と今で、SNSでの発信の軸は変わりましたか?
病気を公表する前と後で変わったと思います。公表するまでは、メイクの方法を教えたい、自分はこれだけメイクができるんだっていうことを知ってほしいと思って、SNSを活用していました。
ですが持病を告白したことで、自分と似た境遇の人がこんなにもたくさんいるんだという驚きと、その人たちが僕をどう見ているかを初めて知ったんです。「原動力になっています」「悩みに立ち向かっていく勇気が生まれました」といったコメントが増えたことで、自分の姿を通じてより多くの人に影響を与えたいという気持ちに変わっていきました。
——全身脱毛症の公表はかなりの反響がありましたよね。当時の思いは?
元々、病気を告白する気はなかったんです。メイクをSNSにあげ始めた当初はすっぴんすら晒したくなかったので。でも、メイク動画をアップすると、コメント欄に「なんで眉毛がないの」といったコメントがすごく寄せられて。メイクの話をしているのに、メイクではなくて自分の顔に注目がいってしまうのがすごく悔しかったんです。
人の心理って隠されているものを追求したくなるじゃないですか。じゃあ、病気のことを隠しているままだと、ずっとメイクに注目してもらえないと思って公表することを決めました。
自分の心が何を一番求めているのかを考えていったときに、公表する怖さよりもメイクを見てほしいという気持ちのほうが大切だと気づいたんです。
——ご自身の病気をポジティブに捉えている姿が印象的ですが、きっかけはあったのでしょうか?
ポジティブに捉えないと幸せになれないから、そうせざるを得なかったというのが正しい気がします。もちろん悲観的になっていた時期はありましたが、病気にばかりとらわれていると、転がってきたチャンスも掴めないので。それに、ずっと悩んでいる時間がもったいないじゃないですか。
自分に与えられたチャンスを逃さないようにマインドチェンジしていかないと、幸せは遠のいていくと感じ、病気ではなくて自分の願望に目を向けるようになりました。
——具体的にどんなマインドチェンジを?
例えば、髪の毛ですね。脱毛症を発症して割とすぐにスキンヘッドにしたんです。ウィッグが被りやすいように。「ウィッグのアレンジでもっとおしゃれにできるかな」とか「逆にウィッグだったら髪の毛が伸ばせるな」みたいに、ちょっとでもいいポイントを見つけるようにしていました。でないと、精神が保てなかったんでしょうね。
——ウィッグヘアだとマトメージュはどのように活用できそうですか?
最近のウィッグは人工毛でも生え際が自然なものも多いので、オールバッグにしたり、毛先を遊ばせたりするときに使えそうだなと思いました。男性にも使い勝手が良さそうなので、広まってほしいですね。
——「普通」という概念にとらわれている人が多い中で、ご自身の好きを貫ける理由を教えてください。
そもそも普通の基準は人それぞれ違うと思うんです。生まれた環境や育ってきた環境で「普通」の価値観は異なるはずなのに、誰かが決めた「普通」の概念にとらわれてしまうと、そこからどんどん抜けられなくなってしまう。
万人受けするファッションとか、モテるメイクとか、そこから抜けられなくなると自分が本当にやりたかったことが分からなくなるんです。自分だけの素晴らしい個性が、「普通」に従うことによって失われてしまう。僕はそれが一番怖いと思っています。
やっぱり自分が一番好きだと思える姿で生きていると幸せだし、ストレスなく生きられる。だから僕は自分のことを好きでいるために、ファッションやメイクも楽しむし、自分のしたい発言・発信をしています。
——ご自身の中に核となるものがあるんですね。
軸がぶれないようにということはずっと考えていますね。僕自身、何をしていてもその人らしさが出てる人がすごく好きなんです。いろんなファッションやメイクをしていても、「なんかこの人っぽい」と思える人って魅力的だなと思っていて。
自分にしかない個性は誰にも真似できないものだから、それを確立したい。「GYUTAEはやっぱりこうだよね」って思ってもらえる何かがないと、勝ち残っていけないと思うので、そこを見失わないようにしたいですね。自分の持っている個性をなくしたくないから、軸を絶対にぶらしたくないんです。
——GYUTAEさん流の軸をぶらさないための方法はありますか?
瞑想ですね。寝る前に目をつぶって、心臓の音だけに集中するんです。それで雑念を一度取り払って、自分が今一番何がほしいのか、何をしたいのかを考えています。ぶれない芯を持っていると、自分の人生に統一感が出るんです。
普段生活していると、「この服かわいい」とか「このメイク素敵」とかいろいろ感じますよね。それが積み重なっていくと、自分の「好き」がぶれてしまう。それを戻す時間が、僕にとっては寝る前の瞑想です。
でも、瞑想中だけでなく、常に頭の中で思考しているかな……すごく理性を働かせていますね。「本当にこれは自分にとって必要なことなのか」「自分にとって居心地のよさとは」とか。24時間ずっと考え続けています。
——著書『無いならメイクで描けばいい』のタイトルがとても印象的です。その真意は?
自分のありのままの姿を愛することはもちろん素晴らしいんですが、それで居心地が悪かったら意味がないですよね。人生は一度しかないわけだし、後悔して悶々と生きるくらいなら、解決法を試すのも一つの手だと思うんです。それが、メイクだろうが美容整形だろうが、何でもいい。
僕は、自分が居心地がいいと感じる姿が「ありのままの姿」だと思っていて。僕にとってのありのままの姿は、メイクをしている姿。「ありのまま」って言葉の定義も自分で決められると思うんです。すっぴんだけが一番自然なわけではなく、自分にとっての「自然」や「ありのまま」を満たしていければいいなと思っています。
——それで著書の中で「普通ってブラックホール」と表現されたのですね。
実は僕自身も一度、「自分らしさ」を見失ってしまったことがあって。自分が本当は何が好きだったかを取り戻さなきゃと思っても、結構忘れてしまうんです。なので一つずつ、自分は何がしたかったのかというものを取り戻していって、今に至っています。
誰かが決めた「普通」に飲み込まれていってしまうんですよね。それで「ブラックホール」と表現したんです。でもやっぱり、自分が一番好きな自分で生きてるほうが一番幸せだし、 それが一番ストレスがないし、一番自分を好きでいられるなと実感したので、ブラックホールからは抜け出せました(笑)
——なんとなく、マトメージュの2022年のブランドメッセージ「かわいいを、解放せよ。」と対になるような言葉だなと感じました。
たしかにそうですね。「かわいいを、解放せよ。」からは、誰かが決めた基準にとらわれずに、自分のやりたいスタイルを貫く、内に秘めていたものを解放する。そんなイメージ。
僕はわくわくしながらメイクをしてほしいという思いで発信をしています。今は、骨格診断やパーソナルカラーなどにとらわれてしまって、自分の本当にやりたいスタイルができない人も多いけど、本当は自分が一番好きなスタイルをするのが一番楽しいはず。自分に似合うものを診断するのもいいけど、それはあくまで基準として持っておいて、好きなものを選んでほしい。
メイクやヘアスタイルってそもそも自分を好きになるためにするもの。かわいくなるための方法はひとつじゃないので、自分が楽しいと思えるスタイルを確立してほしいです。
自分の人生をどう作るかは自分次第。迷うことがあったとしても、人と比べずに思いきってチャレンジしてほしいです。1分1秒もむだにはできないですから。