18歳でキャバ嬢としてデビューしたのち、モデルやブランドプロデューサーとして幅広く活動してきた黒崎みささん。これまでの1,700万円をかけて整形を繰り返してきたという。なりたい自分になるために、自分でお金を稼ぎ、次々に実行していく自立した女性像に惹かれるファンも多い。最近では出産も経験し、双子の母親として育児にも励んでいる。
しかしそんな彼女も、10代を振り返るととにかく自信がなかったと語る。では、そんな彼女がどうやって変化してきたのか。過去を振り返りながら話してもらった。
―黒崎さんは17歳の時に初めて整形を経験されたとのことですが、10代を振り返ってみて、どんな悩みがありましたか?
若い頃から今まで一貫して、容姿の悩みにとらわれている期間が多かったと思います。よく父親に容姿のことをいじられたり、家族と比較して自分が劣っていると思っていたので、「私はブスなんだ」と悩んでいました。今振り返るとそんなにブスじゃないじゃんと思うんですけどね(笑)。
そんななかで、私は16歳の時に東京でアルバイトを始めたんです。思春期だったからというのもあると思うけれど、「東京の女の子めっちゃ可愛い……」と打ちのめされちゃって。それで余計に容姿に悩んで、17歳の時に初めて整形しました。その後も自分でお金を稼いであらかた整形を終わらせたら、前よりは悩まなくなったなと思います。
―2020年までキャバクラでのお仕事も経験されています。キャバクラでのお仕事を通して自分が変化したなと思うポイントはありますか?
キャバクラでの経験は、自分に自信がついた一番のきっかけです。もともとは、外に出る時もオドオドして猫背で歩いているような子だったんです。でも、キャバクラって、自分に自信がないと売れなくて。同じような容姿の2人がいても、自信がありそうな子の方が売り上げを作るんですよ。
だから、私は自信があるフリをしていました。「かわいいね」って言われたら、謙遜するのをやめて「ありがとう」って言った方がお客さんもフランクに話してくれるなと感じました。それがいつの間にか体に染みこんで、お金を稼げるようになって、良いモノを身につけられたり、お客さんやお店の人が認めてくれるようになったりして、結果的にそれが本当の自信に繋がりました。自分の考え方が大きく変わったのは、キャバクラでの経験があったからだと思います。キャバクラの仕事だけではなくて、学生でも会社員でも、自信があるふりをしていた方が人生うまくいく人が多いんじゃないでしょうか。
―その後、2023年には結婚・出産を発表されました。結婚や出産を経て、どんな変化がありましたか?
実は、結婚したことで自分が変わったなと思うことはそんなにないんです。一緒に暮らす人がいてくれて安心っていうぐらいかなと思います。
一方で、ママになったことによる変化は大きかったですね。妊娠中はとにかく気持ちが沈んでInstagramも見れませんでした。特に私の子どもは双子なので、妊娠したら漫画みたいに大きなお腹になって、自分に自信がなくなったし、自撮りもしたくなくなりました。他人のストーリーを見て劣等感を感じちゃうこともよくありました。
でも、産後2か月くらいにモデルのお仕事が決まっていたんです。だから、それに向けてダイエットして17キロぐらい体重を落としました。そうしたら、「ママの割には頑張ってる」と思えるようになって、むしろ昔よりポジティブに自分のことを捉えられるようになりました。
―きっと、産後は働き方や暮らし方にも大きな変化がありましたよね。
変わりましたね。以前はキャバ嬢だったので、基本的に朝寝て、夕方に起きるみたいな生活だったんです。今はもう朝7時に起きるし、ご飯を食べる時間も子どもが寝ている間とかです。今までは全部自分を中心に考えていたのが、全て子どもを軸にスケジュールを考えるようになりました。
大変な生活になるだろうなということは、双子だとわかった時点で覚悟していたのでそこまでギャップはなかったです。ただ、赤ちゃんにも赤ちゃんなりに一丁前に性格や個性があって、全然違うなというのは発見でした。「うちの子はよく食べて寝るいい子に違いない」みたいに妄想しすぎちゃうと、実際に生まれてからのギャップが大変だろうなと思います。
―「ママ」になったことで、社会との向き合い方にも変化はありましたか?
今までは気にしていなかったのに、子どもを産んでから気づいたことは色々あります。たとえば、うちは双子なので車椅子と同じ横幅の大きめなベビーカーを使っているのですが、デパートとかに行った時にエレベーターに乗れないんです。もしかしたら日本語が読めない外国の方なのかもしれないですが、優先エレベーターでも譲ってもらえなかった経験も多くて……。
あと、ファミリー向けのお寿司屋さんに子どもと行った時に「しっしっ」みたいな感じであしらわれたこともあります。子どもが嫌いな人がいることは仕方がないけれど、だったら、ファミリー向けじゃないお寿司屋さんに行ってくれればいいのにと思っちゃいます。意外とみんな冷たいんだなと思うことが増えました。
それから、SNSでの反応は結構変わりましたね。私がただ「キャバ嬢で整形している人」だった時は、テキーラを並べて写真を撮っても、ちょっとネガティブなことを投稿しても「そういう人間だから」と気にされていなかったと思うんですよね。それが、ママになった途端に今まで言われたことのないことを言われるようになりました。
ドラマでもアニメでも母親って「まとも」なキャラクターが多いじゃないですか。だから、ちょっと派手な格好をしていたり、整形しているだけで、「まともじゃない」と思われて非難されるのかなと思います。「ママである」というだけで人の目線は変わるのか、と気付きました。
―おっしゃるように、「ママだからこうしなきゃ」という既成概念は強い印象があります。そういった意見に対し、どうお考えですか?
私は、常識の範囲内で、自分のしたいことをすればいいと思っています。たとえば子どもと接したり送り迎えをするような時は、髪の毛はポニーテールにするし、Tシャツとデニムを選ぶし、化粧も控えめにしています。でも、私はママだけど、1人の人間でもあります。旦那さんと2人でご飯に行くときなんかは、好きな格好をしますよ。TPOに応じて分けられるなら、自分を変えすぎる必要はないんじゃないかなと思います。
見た目に限らず、「ママはこうするべき」と言ってくる人って、半分は自分の親に言いたかったことを言っているのかなと思うんですよね。「あの時こうして欲しかった」って言えなかったことを、自分の親に今更言えないので、代わりにSNSで目立つ人に言っちゃったりするのかなって。もう半分は、私と同じように子育てをしている人や子育てをしてきた人です。もちろんその人だけが悪いわけじゃないけれど、自分ができなかったことをしているのを見て「私は諦めたのに」と僻みのように言ってしまうのかなって思います。
―一方で、ママになったからこそ寄せられるようになったポジティブな意見もあるのではないでしょうか。
そうですね。ママになってから、同世代のママからの相談メッセージを寄せられることが多いんです。「ママになったから諦めかけていたけれど、みさちゃんを見て、ママでもかわいくいようとすることを諦めなくていいんだと励まされました」とかってDMをくれる人もいて、嬉しいです。
妊娠すると、お腹も大きくなるし、産後に髪が抜けてしまう人もいるし、美容院にいく時間もなくなるし、体にも環境にもいろんな変化があるんですよね。そんな中でも自分のかわいいを求めて、より変わっていこうとするのって素敵じゃないですか。なので、まさに今年のマトメージュのコピー「私は、変わることを恐れない。」と重なるなと思います。
あと、素敵な変化って着飾ることだけじゃないんですよ。私はネイルをしていないのですが、子育てをしているとネイルってどうしても邪魔になっちゃうんですよね。そうしたら、「みさちゃんの真似してネイルやめました」って言ってくれる子がいたんです。人によっては、ネイルって自分を可愛くしてくれる大きな武器だと思うのですが、その武器を一つ外すってすごい勇気だと思うんですよ。そんな風に、着飾るだけじゃなくて、子どもとか人のためを思ってする変化も素敵だなと思います。
―これまで黒崎さんはポジティブな意見、ネガティブな意見、様々な意見と向き合ってきたかと思います。そんな中でも自分らしさを保つためにはどうしていますか?
もともとそういう性格なのかもしれないですが、自分を押さえつけるのがあまり得意じゃないんです。それゆえに、もしかしたらわがままに見えるかもしれません。だけど、自分が自分のことを受け止めてあげないとかわいそうだなと思うんです。だから、まず自分で自分の意見を聞いてあげようと思っています。
―過去に、書籍やYouTubeの動画で「幸せは自分で獲りに行く方が良い」とおっしゃっていたのも印象的でした。
冷たい考え方かもしれないけれど、人って想像よりも助けてくれないなと思うんです。私は子どもの頃に助けてもらえないことが多くて、その裏返しで大人になってから人のことを助ける場面が増えました。だけど、残念ながら5人助けたとしても、私が困ったときにお返ししてくれるのは1人くらい。
これに気付いた時、悪いのは人をアテにしたり見返りを求めてしまった自分だなって思ったんです。完全に人を頼らないと人生ハードモードになっちゃうので、甘える賢さも持ちつつ、自分で自分を守るために自立した方がいいなって考えるようになりました。だから女の子だろうと自立した方がいいんじゃないかなって私は思います。
それに、幸せは人から貰うよりも、獲りに行くか与える方が幸福度が高いんじゃないかな。子どもだって、今は「ママ大好き!」と言ってくれるけれど、20年後に言ってるわけないじゃないですか。それだったら、自分が子どもを愛しているという気持ちをベースにした方が心が安定しますよね。いつか無くなっちゃうかもしれない「人からもらう幸せ」よりも、自分の中に幸せの軸を持っておいた方がぶれないと思います。
ー最後に、変わりたいと思っているけれどなかなか一歩が踏み出せないという人に向けて、メッセージをお願いします。
変わることって怖いですよね。でも、それっていきなり大きな変化に挑戦しようとするからじゃないでしょうか。
例えば、見た目の変化だったらいきなり鼻にプロテーゼを入れるのは誰でも怖いと思います。そうではなくて、眉毛を整えてみるとか、ホワイトニング効果のある歯磨き粉を使ってみるとか、ちょっとしたことの積み重ねから始めるのでいいと思うんです。
自分にとっては小さなことかもしれないけれど、積み重ねていった結果、数年後に大きな変化に繋がっていることってたくさんあるはずです。目の前の小さな変化から一歩を踏み出せば、いつかなりたい自分になれると思います。