「コンプレックスをもつ女の子」をチャーミングに描き、国内外で高い評価を得ているイラストレーターのEimiさん。そんなEimiさんに、周りに惑わされず、自分の“かわいい”を貫く秘訣について聞きました。
——女の子のイラストで人気のEimiさん。イラストを描き始めたきっかけを教えてください。
小さいときから絵を描くのが好きでした。もともとは誰に見せるわけでもなく、らくがき帳に描き連ねていて。インターネットが普及し始めてからは、自作のイラストをネット上にアップするようになりました。
そこでイラスト好きの仲間ができて、「東京ではアートのイベントが開催されていて、それを生業にしている人がいる」と教えてもらったんです。たしか中学生のころかな。
それまではイラストを仕事にできるなんて知らなかったから、「自分の好きを活かせる世界があったんだ!」と、とても衝撃で。東京のデザイン系の専門学校に進学し、卒業後はグラフィックデザインの仕事と平行しながらイラストを描いていました。
それで、作品を引っさげて展示会やイベントを開催していたら、「うちでイラストを描かないか」と声をかけていただく機会に恵まれたんです。ちなみに、現在も会社員をしながらイラストを描いています。私の場合、そのほうが“自分らしい絵”が描けるんです。
——Eimiさんのイラストは、「コンプレックスをもつ女の子」をテーマに制作されているんですよね。
もともとは、コンプレックスを絵に投影しているつもりはなかったんです。でも、人に見せたときに「これEimiに似てるね」って言われて。
下半身だけ肉付きがいいとか、そばかすとか、癖のある髪とか、目つきの悪さとか、私自身のコンプレックスをいつのまにか絵に描いていて……。「たしかに私だ!」とびっくりしましたね(笑)。
自分にはない憧れを、絵の中の女の子に反映させている意識はあったけど、コンプレックスまで反映している意識はなかったので。
そして、そんな私のコンプレックスが反映された絵を、「かわいい」って言ってくれる人がたくさんいることにも驚きました。自分にとってはコンプレックスな部分でも、見る人によってはそこが魅力的に映ることもあるんだなって、イラストを通じて教えてもらったんです。
——ちなみに、「憧れ」とはどんなことを反映していたのでしょう?
私はくせ毛で、髪の量も少なくて細いんです。重たいロングヘアが大好きだけど私の髪質では理想通りにならなくて……。だから、私の描く女の子には、私の代わりに憧れが詰まったヘアスタイルをしてもらっています。
ロングヘアはもちろん、ボリュームたっぷりのお団子ヘアやツインテールも大好きでよく描いています。マトメージュが大活躍しそうな髪型の女の子が多いですね(笑)
——Eimiさんはマトメージュを使ったことはありますか?
実は、今日初めて使ったんです……!職業柄、髪が長いと邪魔になったり、汚れてしまったりするので、ずっとショートカットで。マトメージュは「まとめ髪専用」だと思っていたから、ショートヘアの私には関係ないんじゃないかと思い込んでいました。
でも、アホ毛や髪の広がりを抑えるのに使ってみたらすごく良くて!スティックタイプだから、抑えたいところにサッと塗れるのもいいですね。これから夏にかけてジメッとした日が多くなると思うので、ショートヘアのスタイリングにもマトメージュが大活躍しそうです。
——イラストを描き続ける中で変化はありますか?
私の絵は、ピンク色が特徴的だと言われています。私自身はピンク色の物はあまり身に着けないんですけど、見ると「かわいいな」ってテンションがあがるんです。絵の中の女の子に、私の代わりにピンクを楽しんでもらっているのかも。でも、一時期ピンクから離れたいなって思ったこともあるんです。
「Eimiはピンクのかわいい女の子を描くイラストレーター」だと期待されると、「求められているものにちゃんと応えなきゃ」ってプレッシャーを感じてしまって……
——プレッシャーはどうやって乗り越えたのでしょうか?
仕事で描くのではなく、自由に描くことに立ち返りました。最近はネット上にもあまり絵をあげていなくて、自分のためだけに描くことが多いですね。以前は「クライアントやファンの期待に応えなきゃ」と思っていたけど、今は「私が好きで描いているんだから、私だけが見ていればいいや」と思えるようになってきて。
そうしたら、周りから受ける期待に対しても肯定的に受け取れるようになったんです。今は自分が好きだから、「ピンクのかわいい女の子」を描いています。また、最近は女の子以外にも「かわいい存在を描きたい」って気持ちもあるんです。
——女の子以外にはどんな絵を?
植物や、動物、風景や建物とか……。これまではほぼ女の子しか描いていなかったのですが、他にも「かわいいもの」ってたくさんあるなと気づいて。
——描くものは変化しても、「かわいいものを描きたい」という軸はブレずに持ち続けているのですね。
昔から、そのとき私が「かわいい」と思うものを描いています。それが万人受けするものではなくても、私が「一番かわいい!」と思えていればそれでいい。そう意識できるようになったのは最近かもしれません。
——Eimiさんは日本のみならず海外でも展示会やイベントをされています。日本と海外で、イラストを見たときの反応に違いはありますか?
日本だと「かわいい」って声が多いですね。でも、海外だと「かっこいい」もたくさんいただくんです。同じものを見ているのに、国や文化の違いで感想が異なるのは面白いですよね。
——日本だと「かわいい」と「かっこいい」は対局ですよね。日本で言う「かわいい」を、Eimiさんはどう捉えていますか?
以前は、赤ちゃんや女性、小動物など、一般的に「か弱い」とされているものに対して使われるイメージでした。でも、最近は「かわいい」の幅が広がってきている気がしていて。大きい動物や虫、男性に対しても「かわいい」を使う場面も増えていますよね。
「かわいい」の意味が、「自分より弱いものを守ってあげたい」から、「好き」や「愛おしい」というふうに拡張しているんじゃないかな。だから、人それぞれ「かわいい」のイメージは違って当たり前だし、自分の中の「かわいい」も変化して当たり前だと思います。
——マトメージュの2022年のブランドメッセージ「かわいいを、解放せよ。」にどのような印象を受けましたか?
「かわいいを、解放せよ。」って、新しい価値観を発見することだと思うんです。新しい「かわいい」を知るたびに、自分の成長につながるし、より自分を好きになれる。
私は絵を通じて、世の中にはいろんな「かわいい」があることを知りました。最近、友人と一緒に紙もののプロダクトデザインに取り組んでいて。チームであれこれ話したり、練り上げたりする過程で、これまで知らなかった「かわいい」に出会えるのがすごく面白いんです。私ひとりでは生まれなかった視点もどんどん出てきて、それもすごく楽しい!
その影響で今は「すべてのものの“かわいさ”を知りたい」と思っています。私がまだ「かわいい」を見いだせていないものでも、それを「かわいい」と感じる人がいる。その人たちに話を聞いて、私の思う「かわいい」を広げていきたいですね。
——最後に、読者のみなさんに一言お願いします。
今ってSNSなどでいろんな情報が入ってくるから、周りと比べて不安になったり、焦ったりすることが多いと思うんです。私も周りの期待に応えたいあまり、自分の思う「かわいい」を貫けない時期がありました。でも、自分に正直に絵を描いているうちに、「私の思うかわいいはこれ!」って自信を持てるようになってきて。
「コンプレックスをもつ女の子」を描いた私のイラストを「かわいい」と思う人がいるように、かわいいの定義は人それぞれ。自分の思う「かわいい」と、周りの思う「かわいい」は違って当たり前なんです。だったら、自分の素直な気持ちを肯定してあげて、好きなものや自分らしさを見つけていけるといいですよね。