国内外の同世代から人気を集めるモデル/アパレルブランドディレクター・瀬戸あゆみさん。独自のファッションセンスやライフスタイルが注目され、絶大な支持を得ています。
原宿ファッションの代表的な存在として過ごした20代を終え、ことし1月には入籍と妊娠を発表。順風満帆に見える瀬戸さんですが「正直、妊娠の発表はこわかった」といいます。そして、まさに今、自分らしさがわからなくなっているとも語ってくれました。
臨月を迎え、さらなる変化の時期に突入しようとしている瀬戸さん。そんな彼女が体験してきた人生のターニングポイントについてお話を伺いました。
―瀬戸さんは、ご自身のどんなところを「自分らしさ」だと感じますか?
ファッションが好きなところ。独特なカラーリングに特徴があると思っていて、服作りにおいても配色にこだわりがあります。10代のころから古着が好きで、アメリカのカルチャーや映画も大好き。好きなものの軸は昔から変わっていません。
私は、新しいものに目移りするより、自分の好きなものを深堀りしていくオタク気質。どんどん愛情が深くなっていくタイプです。特に意識してないけど人間関係もそうかも。好きになった相手への気持ちがどんどん深くなっていく。変化や進化は良いことだと理解してはいるけど、個人的にはちょっとずつで良いと思う。突然180度変わってしまうなんて寂しい。
―瀬戸さんにとって、おしゃれすることの意味合いはどのように変化してきましたか?
最初は“他の人と違うことがしたい”という感覚だったけど、今は“好きなことの深堀り”。
ファッションが好きなのは幼い頃からではなく、中学生の時から。それまでは目も当てられないほど服に興味がないオタクだったのが、ゴスロリを好きになったことをきっかけに変わり始めました。当時は変身願望があったんです。学校生活が地味だから、ここではない世界に居場所が欲しくて。でも、地元では「恥ずかしい」「誰かに見られたらどうしよう」って気持ちでした。
ちょうどその時、雑誌で原宿ファッションに触れたんです。私には「個性的だけど、誰もが可愛いと感じる女の子像」に見えて、どんどん夢中になりました。頭髪の自由な私服校に進学したことや、高校3年生の頃に一人暮らしを始めた影響も大きいです。雑誌をはじめ仕事が忙しくなって、学校にもあまり行かなくなって。進学校だったから勉強する人が多かったけど、私には学校の外に自分の世界があったんです。
そして何より、そのことを母が理解してくれていたのが良かったと思います。欠席を先生から指摘されても、母はいつも味方でいてくれました。
―「自分らしさ」がわからなくなったことはありますか?
まさに今!妊婦になったことによって、今までのようなおしゃれをする機会が減って、自分らしさがわからなくなる時があります。SNS上ではそんなことないように見られていると思うけど、今は1週間のうち2、3日しかおしゃれをしていなくて。今までは毎日だったのに。こんなにファッションから離れたのは初めて。ファッションは私のアイデンティティだし、唯一の趣味であり特技でもあるから、それから離れると「自分らしさ」がわからなくなります。
でも、頭を抱えて悩んでいる感覚ではなくて。お腹に赤ちゃんもいることだし、この変化は仕方ないか!って気持ちで今の環境を楽しんでいます。ゆるくて楽観的な性格だからだと思いますが、忙しくしていなくても、おしゃれしていなくても、焦らない。元々こういうマインドだけど、周りも優しいし、本当に焦ってない。
今の時代にも助けられているのかも、とも思います。「頑張りすぎなくていい」とか「スローに生きよう」というメッセージに影響されて優しくなれている気がするので。無事に出産することを一番に考えているからこれで良いんです。
―これまでの人生のターニングポイントになった出来事を教えてください。
いくつかあります。一つめは、16歳の時に原宿でスナップされたこと。これがきっかけで雑誌に出始めました。
二つめは、18歳の時にアソビシステムに所属して、「ブランドを始めないか」と言ってもらえたこと。当時はショップ店員で、そのままその職場に就職することを考えていました。服は好きだったしブランドもやってみたかったけど、当時は言葉にできなくて「自分には無理だ」と思っていました。
三つめは、20歳の時にブランド「Aymmy in the batty girls」を始めたこと。そこから自分のアイデンティティが形成されていきました。
四つめは、25歳の時に今のブランド「Dear Sisterhood」を始めたこと。見られ方が徐々に“ファッション好きな女の子”から“女性のエンパワーメントをする女性”に変わっていったと感じています。
そして今、30歳で妊娠したこと。
正直、妊娠の発表はこわかったです。「瀬戸あゆみがママになることを求めていない人もいるかも」って感じてしまって。私はいわゆるママって感じのスタイルではないし、常に恋愛してヒリヒリしている姿を見せているところが好かれている可能性があるように思えました。
でも実際には、冷たい声なんてひとつもない。自分のことのように喜んでくれるフォロワーさんがたくさんいました。すごく嬉しかったし、また新しい一面を見せられたら、と素直に思いました。突然の変化への苦手意識から解放された感覚もあります。
家族ができたことは、本当に大きなターニングポイントになっていると思います。私には家族というものがなかったから。今こうして自分の家族ができて、旦那さんの家族までチームになってくれている感覚があって、嬉しいし心強い。自分の人生を一緒になって考えてくれる人たちができたというのは、とても大きな財産だと思います。
―ターニングポイントに気づいた時、取る行動はありますか?
イメチェン!今の髪型もそう。心機一転だし、後から「あぁ、この時はこういう気持ちだったな」って思い返せるのが髪型やファッションだと思う。
そういう時に参考にするのは、友人。実際に会った時にかわいいメイクやヘアスタイルをしている人に、積極的に聞いて参考にしています。参考にする相手の年代も気にしないし、プチプラでもデパコスでもOK。YouTubeやSNSはあまり見ません。髪型が変わったら今までのファッションが似合わなくなる、みたいなことは特に気にしていません。
―「自分らしさ」や変化に迷ったり悩んだりしている方に向けてメッセージをください。
私も変化することがとてもこわかったけど、SNSで人間味のある部分を見せ続けてきたから、今こうして応援してくれたりあたたかく迎えてくれる人たちがいると思う。普段のありのままの自分を見てくれている人はたくさんいます。等身大であることは人の心を掴むし、揺さぶることができることもある。
どういうふうに変化を受け入れてもらえば良いか悩んでいるなら、素直にそのまま、なるべく自分の言葉で、不安なことを伝えつつ、打ち明けたらいいと思います。思っている以上に世界は優しいから!
―今、臨月ですね。この記事が公開される頃には生まれていると思います。自分へのメッセージをどうぞ。
今のこの充電期間を経て、出産して、本当に大変だと思いますが、大丈夫!私と私の子どもは愛されて、祝福されて、生まれてきています。幸せな姿を発信してもいいですし、それをネガティブに捉えるような人はいないと思っていいでしょう。
楽観的な性格だけど、今までたくさん孤独を感じて、つらい思いをしてきました。だからこそ、人に優しく思いやりを持って、これからは思う存分たのしく明るい人生にしていってください!
―3月18日、第一子を出産された瀬戸さん。
インタビューでは、変化を受け入れてもらう方法として「素直にそのまま、なるべく自分の言葉で、不安なことを伝えつつ、打ち明けたらいい」と話してくださいましたが、その言葉のとおり、産後も等身大の発信を重ねているのが印象的です。
大きな変化を迎えられ、ママになった瀬戸さんの姿もたのしみです。本当におめでとうございます!