「自分らしさ」がわからず、悩んでしまう。一度見つけた「自分らしさ」からはみ出ることを恐れている。—— SNSなどの影響により、周囲と自分を自然と比較してしまいがちな現代では、実に多くの人がその悩みを抱えています。
10年間活動したAKB48を卒業し、新しい一歩を踏み出したマトメージュのミューズ・本田仁美さんは、「自分らしさ」とどう向き合っているのか。そして、「AKB48のひぃちゃん」から、どう変化していくのか。ご本人にお話しを伺いました。
―本田さんは、ご自身の「自分らしさ」が何なのか迷ったり悩んだことはありますか?
誰かと自分を比べてしまう気質だったので、学校や習い事の友達と自分を比べてよく落ち込んでいました。
AKB48に入ってからも、「自分は本当に必要とされているのかな……」と考えてばかりの時期もありました。人数が多いグループなので、どうしても自分の立ち位置や役割について悩むことも多くて。
きっと私のような仕事をしている人でなくとも、社会の中で暮らしていると同じような悩みにぶつかる人は多いんじゃないかなと思います。
―そんな時期もあったんですね。今では人と比べることは減りましたか?
人と比べてしまう考え方ってなかなか直すのが難しくて、すごく時間がかかりました。でも、22年生きてきて、今は「自分は自分でいいんだ」って思えるようになってきました。
そもそも自分と全く同じ人はいません。だったら、そこで「人よりもこれが得意」とか「人よりもこれができない」と比べるより、過去の自分と比べるようにしようと思ったんです。最近は、いかに過去の自分を塗り替えていけるかの方が大事なのかなと考えています。
―今の本田さんは、ご自身のどんなところが「自分らしい」と感じますか?
正直者で、嘘をつけないところかなと思います。だから、割と好き嫌いもはっきりしているし、好きなことに出合うとすごく熱中します。素直な性格とも言えるかもしれません。
―その「自分らしさ」はどのように見つけましたか。
IZ*ONEのオーディションを受けて韓国での生活を経験してからですかね。それまでは実家暮らしで両親に頼ることが多かったのですが、韓国でIZ*ONEメンバーとの共同生活を経験したり、その後1人暮らしをしてみて自立の大切さを学びました。
「自分のことは自分でやる」という意識が強くなった結果、自分の考えをちゃんと持とうと思い始めたんです。それからだんだんと自分に正直に意見を言ったり行動したりできるようになったなと思います。
―一方で、人から言われて気づいた「自分らしさ」や「自分の良いところ」もありますか?
自分のことを人見知りだと思っていたのですが、「全然そんなことないよ」と周りから言ってもらって気づきました。むしろフレンドリーに人に話しかけていることが多いようです。言われてみれば、元々は先輩・後輩関わらず話しかけるのが苦手だったのですが、最近は自分から話しかけにいくことも多い気がします。
あとは、「振りを覚えるのが早いね」とよく言われるのですが、これも言われて気づいたことです。全く自覚がなかったので、人から言ってもらって特技に気づくことができました。
人から言ってもらうことで、苦手だと思い込んでいたものがそうではなかったことに気づいたり、自分の新たな特技を見つけるきっかけになることもありますよね。
―アイドルという表舞台で活躍する仕事をしていることで、本当の自分を発揮できないと悩んだことはありませんか?
確かに、テレビなどに出る時は多くの人が観てくださるので、「私はどこまで言っていいんだろう」とか「これは私がしていいのかな」と立ち止まることもあります。
一方で、アイドルだからこそできることもあるし、周囲に守ってもらえている面もあったとは思うんです。今のアイドルってステージに立つだけじゃなくて、お芝居もモデルも……と色々なジャンルで挑戦しやすい気がします。だから、アイドルであることで息苦しさを感じたことはありません。
―今年1月にAKB48から卒業されました。どんな背景があったのでしょうか?
ずっとタイミングを考えてはいたのですが、2023年にドラマ「最高の教師」に出演したことが自分にとっては影響が大きかったです。ストーリーを通して、私の1回きりの人生をどうやって生きようかと考えて、もっともっと色々なことに挑戦したいと思いました。
それに、今までも演技のお仕事をしたことはあったのですが、初めて同世代の役者さんたちがたくさん集まる現場に入って、ものすごく刺激を受けたんです。私よりも年下の出演者さんも多かったのですが、みんなからやる気をもらって、自分ももっと頑張らないとと思いました。
それから、「最高の教師」の現場で私を後押ししてくれたプロデューサーさんの存在があります。親身になって相談に乗ってくださって、卒業を決めた時も1番に報告しました。そのプロデューサーの方も私と同じように新しい挑戦をしようと考えていた時期だったようで、近くに一歩を踏み出す人がいるということは心強かったです。
―10年続けたアイドルからの卒業は勇気のいることだと思います。新しいことに挑戦するときはどんなことを考えていますか?
失敗を考えたら怖いことですよね。でも、自分が知らなかった自分、自分が知らなかった景色を知るチャンスだとも思うんです。だから最近は、怖いという気持ちよりも失敗してもいいから楽しもう!という気持ちに切り替えられるようになりました。
今年のマトメージュは「私たちは、何者にだってなれる」というキャッチコピーを掲げていますが、まさにその通りだと思うんです。私が卒業を決めた時の気持ちにぴったりリンクしていて、心の中を覗かれているのかなと思ったくらいです(笑)
―髪型は様々な自分を演出してくれるものですが、本田さんは「なりたい自分」に合わせて髪型を変えることはありますか?
AKB48の活動でステージに出る時は踊った時に髪が揺れると魅力的に見えると思って、ポニーテールやハーフアップのような髪型にすることが多くありました。他にも、可愛らしい自分を見せたいと思ったら、三つ編みやツインテール、ふわふわした巻き髪などのアレンジをしたりします。
あと、2023年には久しぶりに前髪を作りました。学園もののドラマに出たことや、センターを務めた楽曲も制服のような衣装だったこともあって、フレッシュな印象を作りたくて前髪を作ってみました。
ファンの方は特に、私が新しい髪型やメイクなどに挑戦すると喜んでくださるんです。だから、最初から「こうなりたい」と思ってやった髪型以外に、自分では微妙かもしれないと思った髪型でも、新しい自分の魅力発見につながることもあってうれしいです。
―今後は、どんなことに挑戦していきたいですか?
本当にたくさんやりたいことがあるんです。具体的なことで一つ挙げると、AKB48やIZ*ONEで活動してきたこの10年で語学を習得したり、海外のファンの方と触れる機会があって、もっと世界のことを知りたいなと思いました。
まだ会ったことのないファンの方や、まだ行ったことのない国で応援してくださっている方もいるので、そういった方々に会いに行けるよう、世界的に活躍できる人になりたいです。
それから、これは芸能活動だけに限らず人生の目標ですが、常にリスペクトできる自分でいたいなと思っています。休みの日が来たらすぐにだらけてしまうのではなくて、少しでも外に出たり運動したり。表舞台に立っている時も1人の時も、常に向上心を持って、過去の自分を更新し続けていきたいです。
ー最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。
私は、みんな、本当に何者にでもなれると思っています。そして、なりたい自分になるには、自分がどれだけ自分を信じて楽しむかだと思うんです。自分がどうなるかは自分にしか決められない、自分次第ですよね。だから私も、1回きりの人生を楽しんで、皆さんと一緒にどんどんチャレンジしていきたいなと思っています。