10代の頃から第一線で活躍を続けているシンガー・ソングライターの北澤ゆうほさん。幼い頃は好きなものが見つからない子どもだったそうですが、ある時から音楽に夢中に。それ以来、自分らしさを大切にしながら活動を続けています。
バンド『the peggies』としてデビューし、2022年の活動休止を経て、現在はソロプロジェクト『Q.I.S.』に取り組む北澤さん。活動の形を変えながらも、音楽を通じて表現を続けています。
これまでどんなことを考えながら音楽や自分自身と向き合ってきたのか。そして、「自分らしさ」をどう捉えているのか。彼女の歩みとその内側に迫ります。
―北澤さんはどんな子どもでしたか?
嬉しい時や楽しい時に、急に踊り出したり歌い出したりする子どもだったみたいです。あまり記憶にはないのですが、ポジティブな気持ちを大きく表現する子どもだったのかな。
でも、小学校に入学してからは雲行きが怪しくなって……。素直すぎたのかもしれないですが、思ったことを包み隠さずに言ってしまう子だったんです。なかなかうまく表現をコントロールできずに、周りの人と上手く交われない期間が長かったです。
―そんな素直すぎる性格は、どこかのタイミングで変わったのでしょうか?
子どもの頃と今を比べるとすごく変わったと思います。バンドで活動したり、ソロでも仕事をしたりするなかで、周りを引っ張るという役割を自覚した時から性格が変わっていって。
仕事では、一緒に仕事をするメンバーのモチベーションや、みんなにとって良い決断みたいなことを考える必要があります。そんななかで、「こうありたい自分」を前より意識するようになりました。
―なるほど、音楽活動が与えた影響が大きいんですね。そんな音楽との出会いは?
4歳の頃からピアノを習っていました。でも、すごく苦手でした。楽譜通りに弾かなきゃいけないこととか、いろんなことを注意されるのにストレスを感じてしまって。小学校3年生の頃、レッスン中に先生から「いま違ったよ」と言われた瞬間に癇癪を起こして「辞めます!」って出て行っちゃったんです。親には事後報告で「私辞めたから」って言って。本当にそのまま辞めちゃいました。
―爆発してしまったのでしょうか。
そうですね。それからしばらくは音楽に特別触れていたわけではなく、中学生の時になんとなく軽音部に入部したのをきっかけに、また音楽を始めました。
私が通っていた中学校では何かしら部活に入らなければいけなかったのですが、特に好きなものがなかったので「どうしようかな」と悩んで。でも、本音としては人前に立つのが好きな自分がいることもわかっていたので、何かそういう活動ができる部活がいいなと思っていました。
とはいえ、大人数の部活に自分が混じれる気もしなくて、消去法でたどり着いたのが軽音部で。部室の明かりが1番暗くて、湿度も高くて、「あ、ここが自分の居場所だ」と思いました(笑)
―それから現在まで音楽を続けられているわけですが、何か音楽にグッと引き込まれるきっかけがあったのですか?
中学2年生の時に、ゆくゆく『the peggies』を一緒にやることになるまーちゃん(Ba 石渡)が、「すごくかっこいいバンドを見つけた」と『THEE MICHELLE GUN ELEPHANT』を教えてくれたんです。
聴いた瞬間、私もめっちゃかっこいいと思いました。そこからすごく音楽に興味が湧いてきて、Myspaceというサイトで、色々なアマチュアバンドを調べるようになりました。この頃が、自分が初めてすごく好きなものに出会った瞬間だったと思います。
それからは、ほとんど勉強せずに音楽ばかりです。親もあまり口出ししてこなかったので、しょっちゅうライブハウスに通い詰めて、朝起きれなくて学校に間に合わない……なんて生活をしていました。
―音楽を仕事にしようと思ったのはいつ頃ですか?
高校1年生の時にオーディションに合格して、さいたまスーパーアリーナで演奏させてもらったことがあったんですね。その時にステージ上でぼんやりと、「私はきっと音楽を続けていくんだろうなあ」と思いました。
でも、「売れるぞ!」「有名になるぞ!」というよりは、とにかく音楽が好きだから続けたいという気持ちが強かったです。
―その後、『the peggies』でメジャーデビューされましたが、それによって音楽への向き合い方は変わりましたか?
音楽の作り方はガラッと変わりました。今までは完全にメンバー3人で全てをやっていましたが、アレンジャーやディレクターが参加してくださるようになって、より効率よく曲をブラッシュアップできるようになりました。私も歌詞とメロディーに集中できるようになったので、歌に対する解像度が上がった感覚があります。
―その後、バンドが休止し、2023年からはソロでの活動を開始されました。ソロ始動前後、どんなことを考えていましたか?
いろいろ考えました。自分にとって、音楽をやる=『the peggies』だったので、自分もここで音楽を辞めるべきなのかなと思ったり。それに、バンドでメジャーデビューしてから、人の期待に応えなきゃと勝手に背負いすぎて苦しくなる時期もあったので、このまま音楽を続けていいのか悩みました。
そうやってずっと考えていたのですが、2023年春に『KANA-BOON』とのコラボ楽曲が出て、久しぶりに人前で歌ったんです。そうしたら、やっぱり自分は表現することが好きで、歌うことが好きだと思えて。自分の曲を自分の声で歌いたいと強く思って、ソロで音楽を続けることにしました。
10代の頃ただただ楽しくて音楽をやっていた時の感覚を取り戻しつつ、よりパワーアップした状態でできるようになった気がしています。
―北澤さんは、アーティストとしての自分らしさや強みはどこにあると思いますか?
素の状態で人前に立てるところかなと思います。自然体で人の前に立てるので、あまりスイッチの切り替えが要らなくて、いつも本当の自分のままで居られる感覚があります。
私、ウソが下手ですぐにバレるんです。だから正直で居ざるを得ないというのもあるんですけどね。自分でも良いところだと思っています。
あと、そういう自分を見せることで、女の子が自分らしいまま自分の人生を開いていくことができるんだと伝えたい気持ちもあります。
―Q.I.S.というプロジェクト名(※)や、北澤さんの書く歌詞からもそういった思いを感じます。
ありがとうございます。子どもの頃から、人と馴染めない経験はありましたが、それでもうちの親は「自分の意思があることや人と違うことは素晴らしいことだ」と言ってくれていたんですよね。だから、昔からぼんやりと「自分らしさ」を大事にしたいと思っていた気がします。
そういう気持ちは音楽活動を始めてからより強くなったようにも思います。人前に立って活動を始めてから、嫌なこと言われたり勝手にジャッジされたりという場面がちょこちょこあったんです。でも、どう頑張っても色々言ってくる人はいるので、それならせめて自分にとって一番かっこいい自分であろうと決めました。
そういう私のことを見て「こんな風に生きてもいいんだ」「こういうロールモデルもある!」と思ってくれる女の子がいたらいいなと思っています。自由に大胆に生きる女の子が増えることに一役買えるような人間になるのが、私の目標です。
※「Queens In Sweaters」=「セーターを着た女王たち」の略。みんなが女王(人生の主役)であり、それぞれが自分を愛し堂々と生きてほしいという意味が込められている。
―とはいえ、北澤さんのように「自分らしさ」を表現するのには勇気がいると感じる人も多いかもしれません。
そうですよね。私はウソをつけないタイプですが、みんながみんな思ったことをそのまま表現することだけが「自分らしさ」ではないとも思うんです。
いつも本音というわけではなくて、ちょっと無理をして頑張ったり、悲しいことがあっても気丈に振る舞ってしまうのが自分だ、という人もいる。そういう面も否定するんじゃなくて、「それが自分である」「人に合わせられるのも良いところ」って自分で自分にポジティブな評価を与えてあげるといいんじゃないかと思います。それでだんだん自信がついてくると、もっと大胆になれたりもすると思います。
―ヘアについてもお話を聞かせてください。北澤さんはよく髪型や髪色を変えられているイメージなのですが、どんな時に変えたくなりますか?
昔から、髪型を変えたりヘアアレンジしたりするのが大好きで。子どもの頃からカチューシャをたくさん集めたり、人の髪をアレンジして遊んだりしていました。
高校を卒業してからはずっと髪をブリーチしているんですけど、気分で髪型や色をよく変えます。バンドの時は「アー写と違いすぎるから、勝手に変えないで!」ってよく怒られました。「でも、K-POPアイドルは1曲のMV内でも髪色変えたりするじゃん!」なんて言い訳して好き勝手に変えていたら、だんだん何も言われなくなりました(笑)
最近は、6年ぶりにショートヘアにしました。自分でも気に入っています。短いですが、そのなかでもいろんなアレンジをして楽しんでいます。
あと、ヘアメイクさんのおかげでマトメージュの存在を知って、自分でヘアアレンジする時にも使うようになりました!
―髪型に加えて、洋服やアクセサリーもいつも可愛いですよね。ライブの衣装はご自身で決められているのですか?
そうです!スタイリストさんではなくて、いつも自分でイメージを決めて、実際に身につけるアイテムも自分で調達しています。最近は、Q.I.S.のバックバンドの皆さんの衣装も私が調達しています。
―素敵です! 最後に、目標に向かって頑張っている女の子たちや、「自分らしさ」を見つけようと頑張っている女の子たちに向けてメッセージをください。
普通に生きているだけで、自信を奪われる場面って多いと思うんです。 「こういう見た目であるべき」「こういう人生を歩むべき」と言われたり、特に女性はやっと獲得した小さな成功体験ですら「女だからでしょ?」と言われたり。そういうメッセージって強いし、真面目に受け取ってしまって凹みそうになることありますよね。
でも、私がこれまで経験してきたことを振り返ると、そんな“べき論”に振り回されずに、自分がしたい生き方を目指した方が楽しいと思います。本当に、マトメージュの今年のキャッチコピーの通り。「私たちは、何にだってなれる。」です。
ちょっと不安でも、大胆に「私は私」と思って進むのが、幸せで楽しい人生への近道なんじゃないかなって思います。