アメリカを舞台にした人気アニメ『パワーパフ ガールズ』。お砂糖、スパイス、ステキなものをいっぱい混ぜて、とびっきりかわいい女の子を作るはずが、間違って「ケミカルX」という薬品が入ってしまい誕生したブロッサム・バブルス・バターカップの3人娘が主人公。彼女たちは、スーパーパワーを駆使して街の平和を守るスーパーヒロインです。
全く違うキャラクターの3人はそれぞれ魅力的で憧れの存在。この度、そんなパワーパフ ガールズとマトメージュがコラボレーションすることになりました。
これを記念し、パワーパフ ガールズが大好きだというモデルのpecoさんと、マトメージュのクリエイティブディレクターを務める辻愛沙子さんによる対談を実施。二人のパワーパフ ガールズ愛を深堀りながら、「自分らしさ」について考えていきます。
―お二人は幼い頃からパワーパフ ガールズが大好きだと伺いました。パワーパフ ガールズとの出会いは?
peco:私は小学校1〜2年生の時にパワーパフ ガールズと出合って、大好きになりました。鉛筆も下敷きも全部、グッズで揃えるくらい! でも、当時は周りにカートゥーン ネットワークを観ている友達が誰もいなくって……。
18歳くらいの頃に改めてハマった時は、ノートに情報をまとめてそれぞれのキャラクターについて勉強をしていたこともあります。
辻:私もpecoさんとほぼ同じくらいに見始めたのですが、確かに周りにパワーパフガールズの話ができる子はいなかったかもしれないです。しかも私の実家は厳しかったのでアニメが禁止されていて。倉庫みたいな小さな部屋で、お父さんのスポーツ観戦用テレビでこっそり観ていました(笑)
―パワーパフ ガールズのどんなところが魅力的だと思いますか?
peco:やっぱり、3人それぞれ全然違うカラーのキャラクターなところだと思います。異なるキャラクターの3人が補い合っているところが素敵だなと。
辻 :優等生っぽいブロッサム、お子ちゃまっぽくてキュートなバブルス、強気でハンサムなバターカップ、それぞれが可愛いですよね。それに、例えば泣き虫で一見弱そうなバブルスが実は戦いでは一番強かったりして、女の子の可能性って無限大なんだと感じさせてくれるところも好きです。
そういう意味では、pecoさんはパワーパフガールズの4人目にいてもおかしくないくらい、女の子をエンパワメントしてくれる存在だなと勝手に思っています。
peco:それは嬉しいです......! 私も、4人目になりたいってずっと思っていたので。性格や戦いの能力もそうですが、ヘアスタイルなど見た目の部分も、みんなそれぞれ違って可愛いですよね。ロングヘアの赤毛が可愛いブロッサム、『LEON』のマチルダみたいなボブがクールなバターカップ、キュートの象徴みたいなブロンドツインテールのバブルス。どのスタイルにも憧れます。
辻:そういえば、3人がお互いの髪の毛を梳かし合うシーンがあって、それがすごくかわいいんですよ。子どもながら、ヘアスタイルやおしゃれを通じた自己表現の楽しさも、パワーパフ ガールズに教えてもらった部分があるかもしれません。
―パワーパフガールズには数多くのエピソードがありますが、お二人が印象に残っているエピソードはありますか?
peco:私は、モジョ・ジョジョの誕生秘話が好きです。モジョ・ジョジョが赤ちゃんの頃のことが明かされる回なのですが、なんで悪者になっちゃったのかが描かれていて。それがとてもいいんですよ。
辻:悪者が絶対悪として描かれていなくて、愛嬌がありますよね。
peco:そうなんです。「めっちゃ可愛い理由で悪さしてる!」って思うシーンもたくさんあります。
―ちなみに、お二人の推しキャラクターはいますか?
peco:私はもうずっとバブルスが好きです。
辻:私もバブルスです。今日もバブルスの洋服を着てきたくらい。
peco:でも、自分が近いのはブロッサムとバターカップかもしれない。細々した計画を立ててどんどん進めていくのが好きなので、そういう部分はブロッサムっぽいかも。家ではよく怒るし、愚痴もたくさん言っているので、そういう部分はバターカップかもしれない。「pecoちゃんはすごく優しい」みたいなことを言っていただくことがあるのですが、実際は全然そんなことないんです(笑)
辻:「優等生は常に優等生であれ」と思われがちだけど、実際の人には多面性がありますもんね。私だと、ハイトーンカラーのヘアスタイルで、経営者をやっていたり報道番組で政治の話をしたりすると、「意外!」「ギャップだね」って言われるのですが、それらは矛盾せず1人の人間の中にあって良いことだと思うんです。こういう人はこうあるべき、みたいなステレオタイプを軽々と越えてくれるのがパワーパフ ガールズ。だから、ブロッサムっぽい面も、バブルスっぽい面も、バターカップっぽい面もみんなの中にあるのかもしれないなと思っています。
―今回、そんなパワーパフ ガールズとマトメージュがコラボすることになりましたね。
辻:そうなんです。私は2021年からマトメージュのクリエイティブディレクターを担当しており、これまで自己表現を応援するブランドとして、様々な取り組みをお届けしてきました。そんな中で、それぞれ自分らしい個性を持ちながら、沢山の人をエンパワメントするパワーパフ ガールズの3人はまさに「女の子はこうじゃなきゃ」という画一的な像を打ち破る存在だと思い、今回のコラボに至りました。
peco :素敵です。実は私はずっとクラシックバレエをしていたので、子どもの頃からマトメージュには馴染みが深くて。そんなブランドとパワーパフ ガールズがコラボするのはなんだか嬉しいです。
辻:そうなんですね! マトメージュは実はpecoさんと同い年くらいのブランドなんです。今後、パワーパフガールズとコラボしたキャンペーンやコラボグッズなども展開していく予定です。
―ここまでパワーパフ ガールズのお話を伺ってきましたが、お二人はパワーパフ ガールズの3人のような「個性」「自分らしさ」はどこにあると思いますか?
peco:周りを気にしないで、自分の好きな自分でいられることが私の「自分らしさ」だと思います。
辻:すぐにそれが出てくるの最高ですね! 自分と周りを比較してしまうことって、特に10代の頃にはよくあると思うのですが、そういう経験はなかったんですか?
peco:生まれてからずっと、こういうマインドです。むしろ、人と一緒なことが苦痛だったんですよ。だから、仲良しグループの中でも、明らかに私だけファッションやメイクの方向性が違う感じで。でも、それが心地よくて、私1人だけ違うことが嬉しかったんです。
周りに「Zipper」や原宿系ファッションが好きな子もいなかったので、好きなファッションを心から共有できる人はいないんだと思い込んでいた部分もあります。でも、ブログなどで発信を始めたら興味を持ってくれる人が増えて、東京に行こうと思いました。
辻:私も原宿ファッションが大好きだったので、当時pecoさんが「Zipper」などの雑誌に出ているのを見て勇気付けられていた側でした!私は中学生・高校生の頃に海外で暮らしていたのですが、みんな前髪かき上げヘアの中、原宿系ファッションに影響されてパッツン姫カットにツインテールで、BOPPERを履いて歩いてました。ニューヨークでそんな格好をしている人はいないので驚かれることもありましたが、自分を貫く姿勢はpecoさんをはじめとする原宿カルチャーを発信している方々から学んだ気がします。
―個性的なことは本当に魅力的ですね。とはいえ、自分がやりたいことはあっても、なかなかそれを実行できないという人も多い気がします。そういう人はどうしたら良いのでしょう?
peco:私自身があまり他人に興味がないということも大きいと思うのですが、基本的に世の中の人はそんなに私のことを見ていない、興味がないだろうと考えています。その延長線上で、他人とは共感できない・分かり合えない、もし分かり合える人がいたら奇跡! くらいの気持ちで暮らしていて。それはネガティブなことではなくて、人は同じ言葉でも、ファッションでも少しずつ違う受け取り方をするものだから。そう思うと、自分が何をしようと大丈夫、と思えるのではないでしょうか?
辻:確かにそうかもしれないです。それこそ当時の「Zipper」ってスタイリストさんがいなくて、モデルさんが自分の世界観を活かしてセルフスタイリングしていたそうですよね。そういうのを見ていると、全員違って全部が「正解」なんだと思えた。じゃあ「自分らしさ」ってなんだろう?と考えるきっかけをくれた気がしていて。パワーパフガールズの3人が全員違う個性で輝いているのもそうで、その人の全てに共感できなくても、所々に好きなところを見つけていけば、いつの間にか新しい"自分らしさ"が出来上がっていたりするものなのかなと。
―お二人はヘアスタイルも周りや肩書きにとらわれない、素敵なスタイルを貫いている印象です。何かこだわりはありますか?
辻:私は学校の校則も厳しくて、小学校まではずっと三つ編み、中学生になったらようやくポニーテールみたいな環境だったんです。その反動もあってか15歳からずっと髪の毛を染めています。多人種・多文化な海外の学校に行ったら、黒髪が正しいあり方だというのも違うんだと気づいて。素のままが居心地のいい人もいれば、自分らしさを自らの手で作っていく人もいるんだなと。だから、かれこれもう10年以上ずっと地毛は見ていないかも。
peco:私も10代の頃からブロンドヘアにしたり赤毛っぽくしたり、色々染めてきました。それこそ、パワーパフ ガールズのバブルスに憧れてブロンドにしたことも。あと、18歳の頃に髪にウェーブをつけられるワッフルアイロンに出合って、それから今みたいなふわふわしたヘアスタイルにすることが多くなりました。あんまりきっちりしすぎず、「カーリーヘアがコンプレックスです」みたいな女の子をイメージしています。
辻:最近は前より少し髪色を暗くされましたよね? pecoさんはいつも髪色も、ヘアスタイルも素敵だなと思うのですが、何かお手入れで気をつけていることとかありますか?
peco:髪色は、長らくハイトーンだったのですが、地毛っぽい茶色にしたくて、色々と写真を探して美容師さんにお願いしました。お気に入りの色合いです。でも、ケアについては実はそんなにきっちりやってないんです。ドライヤー前にトリートメントをするくらいで、あとは乾かすだけ。
辻:私は対照的です。私は色が抜けやすい紫系のカラーにすることが多いので、キープするためにヘアケアにはこだわりがあります。シャンプー、ヘアマスクからドライヤーまでいつも使っている物を常に使いたいので、旅行などは一苦労です。
―逆に、「自分はこういうイメージだから」とセルフイメージにとらわれすぎて変化できない、なんてことはないですか?
辻:pecoさんは、おもちゃ箱からとび出してきたようなパステル&ポップな世界観から、アメリカンドラマにいるようなカジュアル&ポップな雰囲気に少しずつスタイルを変化させているイメージがあります。でも、全部pecoさんらしいのがすごいなと思っていて。
peco:年齢を重ねるにつれて、少しずつ変化はしています。でも、根っこは変わっていなくてアメリカの80sファッションがお手本です。よくやるのは、Googleの画像検索で「80s Teen」とか「80s women」とか。10代の時はティーンのファッションを参考にしていたけど、最近は「80s mom」とか自分の環境や年齢に合わせて検索キーワードを変えたりしています。
辻:固有名詞で誰かを参考にしているんじゃなくて、匿名的な“どこにでもいた”普通の女の子を参考にしているのが素敵です。だれもが特別なんだなと思えるというか。「ママだからこうでなくちゃ」みたいなことにとらわれる瞬間はなかったですか?
peco:周りからどう見られるか、というよりは息子にとっていいママでいなきゃという意味で、「ママだから」と思ってしまったことはあります。元々の私は短気だし、せっかちだけど、息子の前では広い心でいなきゃと思ったことも。でも、時間が経つにつれて私も人間だからなと思って、無理に自分を変えず息子とも人と人としてガンガン喧嘩するようになりました。
辻:素敵なエピソードですね。お母さんだって、母親である前にひとりの人ですから。私はpecoさんとはまた違った内容ですが、自分らしさのバランスに悩むことはあります。ファッションというよりは情報発信の面です。私は女性をエンパワメントするメッセージを期待されることが多くて、もちろんそういったメッセージの発信は大事だと思っているのですが、自分自身が弱っている時はなかなか難しいこともあって。少しずつではありますが、常に戦わなきゃと思わずに自分のペースで自分らしく発信できるようになってきたところです。
―最後に、「自分らしさ」を見つけたい、「自分らしい変身に挑戦したい」と思っている人に向けてメッセージをください。
辻:外からみて「あなたはこういう人」と決めつけられることってよくあるけれど、それに従わなくても良いと思うんです。外からみたイメージと中身が全然違うことってよくあるし、自分の中に複数のキャラクターが共存していることもあるはず。みんな迷いながら自分らしさを探していると思うし、私もそうです。だからこそ、少しでもやってみたいと思ったことにはチャレンジしてみるといいと思います。
peco:本当にそう思います。明日のことも、来年のことも誰も正確にはわからないですよね。だから色々と心配して悩みすぎるよりは、やりたいことや目標に向かって進むしかない。そうやって変化を続けているうちに、パッと振り返って「めっちゃ進んでるやん!」と嬉しくなることもあります。だから、まずは今の自分が進みたい方向にぐんぐん進んでみるのがいいと思います。